AIによる業務効率化を検討する方の中には、どの業務をAIに代替できるのか、どうすれば業務を効率化できるのか、よく分からないという方も多いのではないでしょうか。この記事では、AIによる業務効率化の事例を紹介するとともに、AI導入に際して注意すべきポイントについて解説します。AIによる業務効率化に興味のある方は、ぜひご覧ください。
問い合わせ対応は、AIによる効率化が盛んな業務のひとつです。
たとえば、問い合わせ対応にAIチャットボットを活用することで、人的コストが削減できるだけでなく、頻度の多い問い合わせに高精度かつ迅速な回答を返せるようになります。
また定型の問い合わせへの対応をAIチャットボットに任せることで、より複雑な質問に担当者が集中することも可能です。
問い合わせ対応業務の効率化は、顧客満足度の向上につながるだけでなく、社内対応に活用すれば従業員満足度の向上にもつながります。
AIは、営業活動の効率化にも力を発揮します。
営業活動にAIを導入すると、顧客属性や購買履歴などの蓄積したデータをもとに、成約確率の高い見込み顧客の抽出、顧客の属性に適した商品のレコメンドといった提案が可能に。
AIの提案を参考にすることで、営業担当者はクロージングなどの業務に集中することができるようになります。
人事業務にテクノロジーを掛け合わせた、HRテック(Human Resource Technology)でもAIは活用されています。
たとえばエントリーシートの審査にAIを導入すれば、採用担当者の負荷が軽減するのに加え、人でなければ判断できない情報の精査に集中することが可能になります。
また採用活動だけでなく、評価やキャリアプランの設計など、従業員満足度の向上にもAIは活躍します。
物流業界はAIによる業務効率化が著しく、入出庫作業・受注処理・検品業務・荷物仕分けなどの各工程をすべて自動化・省人化することが可能です。
たとえば、従来は入出庫作業時にWMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)に入力する手間が生じていたのが、画像認識AIを取り入れることで自動化しました。
また荷受け・発送だけでなく、渋滞情報をもとにしたドライバーの配送ルート最適化や、配車計画の自動化、危険運転の検知など、倉庫の内外で活躍します。
生産現場では、ファクトリー・オートメーション(Factory Automation:FA)が盛んですが、これにAIを活用することでさらなる効率化が実現しています。
FA機器にAIを導入することで、FA機器導入のネックとなっていたシステムの調整作業まで自動化。熟練工の技術をAIが学習しサポートすることで、経験の浅い作業者でも熟練工と同等の作業が可能になりました。
生産現場における作業の自動化は、省人化による人的コスト削減につながるだけでなく、人的ミスの回避、事故などのリスク回避といった安全性確保にもつながります。
設備の老朽化、機械の故障検知などの、保守・保全の現場でもAIは活躍します。
専門担当者による目視でのチェックが必須だった点検業務の自動化、点検の難しい建物・設備の外観劣化の点検効率化など。
メンテナンスの省力化・効率化によって人員を適切に配置できるようになり、また担当者によって精度の差などが生まれにくい環境を実現できます。
AIによる業務効率化の具体的な事例を5つ紹介します。
近年、行政における窓口業務の代替が進んでいます。
静岡県焼津市、福島県会津若松市、岡山県和気町では、行政案内に対して、AIを活用したチャットボットサービスを導入することで、休日・夜間問わず、市民からの問い合わせによりタイムリーに対応できるようにしました。
またそのほか、東京都港区や神奈川県綾瀬市では、自動翻訳システムを導入したり、自動翻訳システムを組み込んだチャットサービスを提供したりすることで、外国語話者住民からの問い合わせ対応を可能に。
さらに、福井県永平寺町では、訪日外国人旅行者の対応のために、観光案内多言語AIコンシェルジュを導入しました。
参考:
アメリカの大手IT企業であるIBMでは、自社のAI「IBM Watson」を、従業員体験向上のためにフル活用しています。
スキル・職務経歴・キャリア志向などのデータを分析し、従業員ごとに適した学習機会を最適化・マッチングし、従業員満足度の向上に努めます。
従業員からの問い合わせには基本的にAIチャットボットが対応しており、キャリアアドバイスをするコーチングAIも完備。業績管理・給付登録・報酬決定計画など、特定の時期のみ使用率が高くなる季節型ボットも多いそうです。
また採用活動でもAIを活用しており、求職者と対話するAIチャットボットを導入したところ、検索から応募へ進む割合が12%から36%まで向上しました。
なおソフトバンクでは、同じくIBM Watson(日本語版)の導入により、エントリーシートの評価にかかっていた工数の75%削減を実現しています。
参考:
ユニクロを展開するファーストリテイリングは、2018年に、ダイフク社と共同して倉庫業務にAIを導入・自動化することで、約100人いた従業員を10人まで省人化することに成功しています。
この取り組みのなかで、ファーストリテイリングとダイフク社は、倉庫業務の完全自動化へ向けて次の取り組みを行いました。
1.商品の積み下ろしの自動化
2.RFIDによる検品の自動化
3.保管スペースを天井まで広げ保管効率のアップ
4.商品の入出庫の自動化
5.ピッキング作業の最適化
6.配送箱の作成を自動化
7.荷物量に応じた配送箱容積の最適化
8.配送仕分けの自動化
9.商品コンテナ片付けの自動化
さらに翌2019年に、それまで自動化が難しいとされてきたピッキング作業まで自動化することで、完全自動化を目指します。
参考:
サプライチェーン改革実現に向け、戦略的グローバルパートナーシップを拡大 - ダイフクに加え、MUJIN、Exotec Solutionsとパートナーシップを本日締結|ファーストリテイリングIRニュース
ドイツの自動車メーカー・アウディは、プレス工場における品質検査に、自社開発のAIを導入しました。
数百万枚に及ぶテスト画像を使いAIをトレーニングすることで、板金に生じた微細な亀裂の検出を可能にしたのです。
品質検査AIの導入は、同社がFAおよびスマートファクトリー化を推し進める上で非常に重要なステップであり、今後はプレス工場だけでなく、塗装工場や組立工場などもサポートできるだろうとしています。
参考:
Audi optimizes quality inspections in the press shop with artificial intelligence|Audi MediaCenter
北海道室蘭市の事例では、道路の点検などの管理業務を効率化しました。
室蘭市では440kmという膨大な長さの道路を管理しており、限られた予算で効率的な維持管理を行うためにAIの導入を決定。
AIを活用した「ひび割れの自動検出システム」を開発し、車載カメラ画像をもとにひび割れ率をランク別にマッピングすることで、市内全域の路面健全度を可視化しました。
従来の、職員による目視点検よりも高精度かつ低コストの道路維持管理を実現しています。
また千葉県千葉市では、車載カメラの撮影画像から道路の損傷具合を判定可能にすることで、専門職員の業務量を削減する取り組みも行われています。
参考:
事例6. AI分析により金型製造の加工時間40%削減
オムロンでは、マシニングセンタによる金型加工時の工具の加工条件をAIで分析し、金型製造にかかる加工時間を40%削減することに成功しています。 まず、現場の制御機器やセンサーなどの入力機器からのデータをAIコントローラーにより収集し、収集したデータを整形してサーバに蓄積します。蓄積したデータをもとに、従来は属人化していたいわゆる”匠の技”を見える化するなどして、分析によって得られた知見をAIコントローラーにフィードバックする仕組みです。 加工時間が40%削減したのに加え、工具の摩耗量は20%削減されたといいます。 参考: 匠の技の“見える化”で、金型製造の加工時間40%削減|OMRON制御機器 AIで金型加工を自動制御、熟練工のノウハウを注入し加工時間を40%削減|MONOist
事例7. AIカメラ搭載バスによる巡回システムの運用
大阪ガス株式会社は、ガス事業者としてはじめてAIカメラを搭載した路線バスによる、ガス管パトロール業務の試験運用を開始しています。この試験運用で用いられたAIカメラは、スタートアップ企業アプトポッド社と共同で開発したものです。 2021年6月1日より開始した試験運用では、同社が日常的に実施しているガス管の破損リスクを低減するためのパトロール点検が抱えていた課題の解決を目指しました。 AIカメラ搭載路線バスの導入前は、巡回車両の巡回時間外に発生するリスクに対応できなかったのに対し、同一路線を1日に複数回走行する路線バスの活用により、終日パトロールすることができるようになりました。 同社では、2021年秋以降の本格運用を開始予定です。 参考: 【AI活用】ガス管の破損リスク低減・生産性向上を実現!大阪ガス×AIの新たな一手とは!?|PR TIMES
事例8. AI活用による不在配送の削減
株式会社JDSC、佐川急便株式会社、東京大学大学院 越塚登研究室・田中謙司研究室、横須賀市、グリッドデータバンク・ラボ 有限責任事業組合の5者は、共同で取り組む「AIと電力データを用いた不在配送問題の解消」に関する世界初のフィールド実証実験の結果、約20%の不在配送を減少することができたと発表しました。 実験では、電力データを活用した在宅判定アルゴリズムにより在宅予測・判定を行い、それらをもとに実際の配送を行います。ドライバーは、地域の担当ドライバーのほかに代走ドライバー、新人ドライバーなどでも対照実験を実施したところ、不在率削減効果のドライバー間での差は見られなかったとのことです。 さらに本実証実験では、「終日不在でも当日中に訪問し不在票を残す」といった現実に即した運用の範囲内で実現できたといいます。 参考: 世界初「AI活用による不在配送問題の解消」フィールド実証実験にて、不在配送を約20%削減|PR TIMES
マクロセンドは、AI活用の前段階として必要な、データ自動収集システム、データレイク・DWH基盤構築、セルフデータプレパレーションツールの提供等、各企業の状況・要望に合わせたデータ活用、DXを支援するサービスを行っております。興味のある方は、以下のサービス記事もご確認ください。
2020年8月7日