この記事では、スーパーアプリ・ミニアプリの導入実績や、ミニアプリとネイティブアプリの違い、企業目線・ユーザー目線それぞれから見たLINEミニアプリ導入のメリットといったさまざまな面から、LINEミニアプリが注目されている理由について解説します。 LINEミニアプリで実現できる機能や、実際の活用事例に興味のある方は下記記事もあわせてご覧ください。
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LINEミニアプリは、LINE株式会社の提供するプラットフォーム上でアプリ機能を利用・提供できる、店舗や企業向けのサービスです。
LINEの国内月間利用者数約9,200万人(※2022年6月時点)をターゲットとしてアプリを提供できることから、企業にとって新たな顧客接点になるとして注目を集めています。
2020年7月に一般の開発申請が開始されてから、多くの企業や店舗で活用が進んでいます。しかし、注目されている理由や利用するメリットがよくわからず、なかなか導入に踏み切れないという企業もまた多いのではないでしょうか。
そこで本稿では、LINEミニアプリが注目されている理由に焦点を当てて解説します。LINEミニアプリが注目されている大きな理由は、主に次の3点です。
- ①先行事例で大きな成果が出ている
- ②従来のアプリに比べてさまざまなメリットがある
- ③現代企業の抱える課題にマッチしている
ひとつずつ見ていきましょう。
スーパーアプリとミニアプリについて
日本国内でLINEミニアプリが注目される理由のひとつとして、「LINEミニアプリに限らずミニアプリ自体に注目が集まっている」という点が挙げられます。そこで「LINEミニアプリ」について考える前に、まずは「ミニアプリとはそもそも何なのか」を見ていきましょう。
スーパーアプリとは、LINEミニアプリに対するLINEアプリのように、親となるアプリのことです。そして、スーパーアプリ上で利用できるアプリ群のことを「ミニアプリ(Mini App)」(※)といいます。
ミニアプリは、スーパーアプリを介してダウンロード不要で利用できるようになっており、個別にダウンロードする必要がありません。スーパーアプリさえ端末にダウンロードしてあれば、スーパーアプリ上で提供されるすべてのミニアプリが利用できる仕組みになっています。
従来のようにGoogle PlayストアやApp Storeといったプラットフォームを介してダウンロードする仕組みと違い、ダウンロードが不要のため端末容量を圧迫する心配がありません。加えて、ミニアプリで利用するユーザー情報は基本的にスーパーアプリのものと紐づけられるため、アプリごとに会員情報などを登録する手間がかからない点も大きなメリットと言えるでしょう。
そのほか、ミニアプリを利用するメリットの詳細は、のちほど企業目線とユーザー目線それぞれの視点から解説します。
※ミニアプリの呼称はスーパーアプリによってさまざまです。
(例:WeChatの「WeChatミニプログラム」、Alipayの「Alipayミニプログラム」など)
スーパーアプリとミニアプリという仕組みを利用すると、どのような成果が得られるのでしょうか。実際に、スーパーアプリ先進国である中国や東南アジアの事例を見てみましょう。
まずは中国の事例です。
中国のスーパーアプリの中でも代表的なのが、テンセントのWeChatが提供する「WeChatミニプログラム(微信小程序)」と、アリババのAlipayが提供する「Alipayミニプログラム」です。
テンセントのWeChat
WeChatは、中国テンセント社の提供するアプリで、2011年1月にサービスを開始しました。サービス開始当初はインスタントメッセンジャー機能を主としていた、いわば中国版LINEのようなものです。
しかし、WeChatミニプログラム(微信小程序)の提供を開始してからは、メッセンジャーやチャット機能以外にショッピング、チケット予約、注文、決済、配車、税金申請といったあらゆる機能・サービスを包括する社会インフラ的なプラットフォームアプリへと進化しました。
さらに新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、オンライン診療や健康格付けアプリといった医療関連サービスがリリースされている点からも、社会インフラとしての役割を担っていることがうかがえます。
そんなWeChatミニプログラムは、2021年時点でミニプログラムの数が700万を突破。DAU(日間アクティブユーザー)は4億5,000万人、MAU(月間アクティブユーザー)は12億6,000万人を記録しています。また、1日の平均使用時間は1,350秒とのことです。
さらにミニプログラムを介して医療サービスを利用したユーザーは累計7億人以上、行政サービスを利用するユーザーは毎日1億人以上いたといいます。
参考:
WeChatミニプログラム、1日あたりのアクティブユーザー数が4億1000万超|36KrJapan
WeChatミニプログラム、21年のDAUが4億5000万人に|36KrJapan
アリババのAlipay
中国アリババの提供するアプリAlipayも、WeChatと同様、もともとシンプルな機能を持ったアプリでした。Alipayは決済アプリとしてシェアを獲得したのち、WeChatに追従する形で2018年にAlipayミニプログラムを正式リリースしています。
WeChatが完全分散型のエコシステムをもつスーパーアプリであるのに対し、Alipayは中心化と分散化を組み合わせた設計となっている点が特徴です。
分散型の場合、特定のアプリを利用するためには、QRコードやリンクを介してアクセスするか、アプリの正式名称を入力して検索する必要があります。すべてのアプリが平等に扱われるため、参入する企業にとっては信頼感があると言えます。
一方で分散型の場合、新たに起業した会社や、リリースしたばかりのサービスはなかなか注目されないというのがネックです。そこでAlipayでは適度に中心化を組み合わせることで、新規に参入したアプリであってもユーザーの目に止まるような状態を目指しました。
その結果、例えば古着を回収するビジネス「白鯨魚」は、ミニアプリの利用を開始したところそれまでのDAUが2~300人であったところが1.5万人超へ拡大。さらに、引っ越しサービスの「易豊搬家」は、ミニアプリの利用を開始したところ、DAUがそれまでの10倍に伸長したとのことです。
東南アジアのスーパーアプリ代表例
続いて東南アジアの事例です。東南アジアのスーパーアプリで代表的なのは、シンガポールのGrabやインドネシアのGoTo(旧Gojek)です。
シンガポールのGrab
シンガポールに本社を置くGrab社が運営するGrabは、東南アジアで最大の規模を誇るスーパーアプリです。2012年に配車アプリとしてサービスをスタートしました。東南アジア8か国の400都市以上でサービスを展開し、1日の平均乗車回数は4,600万人(2019年3月統計)、Grab利用者は1億8,700万人(2020年6月統計)です。
配車アプリやライドシェアサービスといえば米国Uberが有名ですが、東南アジアではGrabが覇権を握ったことから、2018年にUberは東南アジアからの撤退を表明しています。Grabは、それほど現地に根付いたサービスと言えるでしょう。
Grabでは、配車サービスやライドシェアサービス以外にも、フードデリバリーの「GrabFood」、食材デリバリーの「GrabFresh」、モバイル決済の「GrabPay」、金融サービスの「GrabFinancial」などといったサービスを複数提供しています。
そんな中でも金融サービスの伸長は目覚ましく、2018年1月から5月までの5ヶ月間で、Grab Financialの総決済額は2倍以上に増えるなど急成長を遂げています。
インドネシアのGoTo
インドネシアのGoToは、インドネシアの配車・金融サービス大手のGojek(ゴジェック)と、EC大手のTokopedia(トコペディア)が2021年5月に合併して誕生した企業です。
前身となったGojekの2019年の実績は、アプリダウンロード数1億回以上、ドライバー数約100万人、加盟店約400店、MAU2,500万人、1分間の取引3,680回でした。また、Gojekは2016年4月という早期の段階で決済アプリを追加しており、ストリーミング配信やオリジナルコンテンツ作品の制作にも着手しています。
そんなGoToは2020年時点で18億件以上のトランザクションを発生させており、その取引総額は220億ドル超。じつに、インドネシアのGDPの2%以上に貢献しているとのことです。
参考:
インドネシアのスーパーアプリ「GoTo」が評価額3兆円突破へ|Forbes JAPAN
ネイティブアプリとミニアプリの違い
次に、LINEミニアプリが注目されている理由のひとつに、ネイティブアプリと比べてメリットが多いという点も挙げられます。
まず、ネイティブアプリとミニアプリの違いについて見ていきましょう。
ネイティブアプリは、App StoreやGoogle Playストアのような、アプリストア上で提供される一般的なアプリのことです。端末へダウンロードすることで、さまざまな機能やコンテンツを楽しむことができる一方で、端末の容量を圧迫する点がネックと言えます。
また、アプリが増えすぎると端末のホーム画面が見づらくなるといったデメリットもあることから、利用頻度の低いアプリはそもそもダウンロードされなかったり、ダウンロードされても整理・削除されてしまったりする傾向があります。
アプリストアを介して提供されるネイティブアプリに対し、LINEミニアプリのように、親となるスーパーアプリを介して利用できるミニアプリは、アプリストアから個別にダウンロードする必要がありません。プラットフォームとなるスーパーアプリさえダウンロードしておけば、すぐに利用できる点が大きな特長です。
ミニアプリが、ネイティブアプリに比べて利用されやすいことを示す調査データもあります。
こちらのグラフは、中国の市場調査会社QuestMobileの調査データで、橙色の部分はネイティブアプリの割合、灰色の部分はWeChatミニプログラムの割合、水色の部分は百度(Baidu)ミニプログラムの割合を表しています。
このデータによれば、ネイティブアプリとミニアプリ(ミニプログラム)の両方を提供している場合、ミニアプリの利用割合がより多いサービスもあることが確認できます。
さらに同社の別の調査データでは、WeChatミニプログラムの利用時間が、WeChat本体(SNSと決済機能)の利用時間より多くなっていることも明らかになっています。
参考:
LINEミニアプリのメリット
ここからは、LINEミニアプリのメリットについて、企業目線とユーザー目線の両面から改めてまとめていきたいと思います。
企業目線のLINEミニアプリのメリット
まずは企業目線から見た、LINEミニアプリを利用するメリットについてです。
より多くの利用者数が見込める
LINEミニアプリを利用する企業目線のメリットのひとつは、その他の選択肢に比べてより多くの利用者数が見込めるという点です。
冒頭でも少し触れた通り、本稿執筆時点(2022年6月)のLINEの国内利用者数は月間約9,200万人と、日本人口のおよそ7割が利用している計算になります。
さらに、LINEの特徴のひとつとして、性別・年齢・職業といったユーザー属性が多岐にわたることも挙げられます。LINEマーケティングソリューションカンパニーが2021年に公開した資料によれば、10代から50代の80%以上がLINEを活用しており、60代の52.8%が利用しているなど、ユーザー層は非常に幅広いものです。
日本国内にはLINE以外のスーパーアプリもすでに存在しますが、その中でLINEミニアプリを選ぶ理由のひとつとして、利用者数の多さは見逃せないでしょう。
参考:
LINE株式会社 マーケティングソリューションカンパニー 2021年1〜6月期版 V1.0|LINE for Business(PDF)
サービスを継続して利用してもらえる
LINEミニアプリのメリットとして、その他の選択肢と比べて継続利用されやすい点も挙げられます。
ネイティブアプリの場合、インストールというハードルを越えたとしても、端末容量やホーム画面の整理といったタイミングで削除されてしまうリスクがあります。それに対しミニアプリは、インストール不要で容量を消費しないので、削除されにくく継続的な利用が見込めるのです。
それに加えてLINEミニアプリは、そのほかのミニアプリと異なりリテンション機能に優れています。たとえばトークルームによる通知機能があるほか、LINE上のホームタブやLINE公式アカウントからの起動、サービス公式HPやSNSのリンク、チラシのQRコードなど、さまざまな導線からLINEミニアプリの起動を促すことができます。
これにより、アプリ起動の煩わしさを理由とするサービス利用率低減が回避でき、リピート利用の促進によりユーザーの継続利用率を高める効果が期待できるでしょう。
また、LINEミニアプリで予約した情報や取得したクーポンはLINE内で共有することができるため、LINEユーザー同士のコミュニケーションを起点とした流入も期待できます。
コストが抑えられる
LINEミニアプリは、提供にかかるコストを抑えられる点も魅力的です。
まず、AndroidやiOSといったOSごとの開発が不要であり、さらにスーパーアプリであるLINEの提供する各種APIを活用できるため、開発コストが抑えられます。
また、ネイティブアプリでは認知拡大やダウンロードのために相応の宣伝コストをかける必要がありましたが、LINEミニアプリならLINEユーザーの目に届く機会も増え、宣伝コストを抑えられる可能性があります。実際、LINEミニアプリをLINE公式アカウントと併用することで、広告費を削減したのにリピート率が増加したというケースもあるようです。
加えて、LINEミニアプリはプラットフォームを利用したときに発生する決済手数料がかからない点も大きな魅力です。Google PlayストアやApp Storeといったプラットフォームでは、15~30%に相当する額を決済手数料として支払わなければいけません。
それに対しLINEミニアプリでは、決済手数料がかからない上に、決済手段を自由に設定することもできます。(ただし、各決済事業者が設定する決済手数料は発生します)
参考:
国内利用者数9000万人のLINEを活用し、簡単に店舗をDX。便利で快適、売り上げもアップする快進撃中のサービスとは | 広告企画|ダイヤモンド・オンライン
ユーザー目線のLINEミニアプリのメリット
次に、ユーザー目線でLINEミニアプリを利用するメリットを見ていきます。
アプリをダウンロードする手間がかからない
繰り返しになりますが、LINEミニアプリをはじめとするミニアプリは、ダウンロード不要で利用できるのがメリットです。
プラットフォームとなるアプリ以外にアプリをダウンロードする手間がかからない点は、利用者にとっても大きなメリットと言えます。
ホーム画面を管理する手間が省ける
こちらも繰り返しになりますが、ミニアプリはスーパーアプリを経由して利用するため、ホーム画面を管理する手間がかかりません。
特典などを目的に一時的にネイティブアプリをダウンロードする場合、これまでは用の済んだアプリは都度削除したり、定期的にホーム画面を整理したりする必要がありましたが、ミニアプリではそうした手間が一切不要です。
そのため、ネイティブアプリに比べてアプリ利用までの心理的なハードルが低いと言えます。
端末の容量を気にせず使える
ミニアプリは、基本的にHTML5をベースとした言語で動作するため、端末の容量を圧迫しません。
例えば中国・HUAWEIの提供するQuick Appでは、1GBのストレージで2,000以上のミニアプリ(ミニプログラム)が動作可能だと言います。
参考:
アプリをインストールせずに使えるファーウェイの「Quick App」が便利|週刊アスキー
企業課題を解決するLINEミニアプリの機能
最後に、具体的にLINEミニアプリを導入・活用することで解決が見込まれる企業課題を見ていきましょう。小さな店舗から大きな企業まで、LINEミニアプリの活躍の場はさまざまです。
順番待ち
飲食店で混雑する時間帯に、従来は店舗の入り口に順番待ちリストを設置して対応していました。
しかしコロナ禍においては、行列に並んで長時間”密”な状態が続くことを不安に思う人も多く、行列に並ぶこと自体を避ける傾向があります。さらに、順番待ちリストに記名して、個人名で呼ばれることに抵抗感を抱く人もいるのだそうです。
こうした課題を解決するのが、「順番待ち」のLINEミニアプリです。使い方は簡単で、LINEで専用のQRコードを読み込むだけで、順番が近づくとLINEに通知が来るようになります。
行列のできる飲食店にこのLINEミニアプリを導入したところ、案内スタッフの負担が減り、客も待ち時間に自由に行動できるようになったことで、店舗・顧客双方のストレスが軽減。なかには、予約した後のキャンセル率が半分に減った例もあるといいます。
参考:
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店内モバイルオーダー
店内で飲食する際も、可能な限り接触を減らしたいという人は多いでしょう。そこで活躍するのが、店内モバイルオーダーのLINEミニアプリです。
メニュー表に記載したQRコードを読み込めば、LINEを介して注文することができます。
コロナ禍における感染対策として機能するだけでなく、注文を受けるスタッフの負担も減るため、オーダーに関する工数が減り企業目線でもメリットの多い機能と言えます。
会員証の発行
LINEアプリを使って、自社サービスや店舗の会員証をLINE上で提供することもできます。
新たに会員証を発行したい場合や、オンラインショッピングサイトで会員証を発行したい場合だけでなく、スーパー、ドラッグストア、アパレルなどのオフライン店舗で会員証を提供している企業が、紙の会員証からオンライン会員証に移行する際にも利用できます。
今後の展開として、図書館の貸し出しカードやお薬手帳、ホテルのチェックインといった形での利用も増えていくことが予想されるとのことです。
小売事業者のDX推進
LINEミニアプリできめ細やかなサービスが実現すれば、ユーザーは来店前から来店後までシームレスでストレスレスなサービスを受けられるようになります。
はじめて訪れた店舗でも会員登録や決済情報の登録といった手間を最小限で済ませることができ、注文や決済のタイミングでも混雑を避けられるでしょう。それらのストレスを回避することができれば、ユーザーの定着効果も期待できます。
さらに店舗側も、煩雑な業務から解放されれば、丁寧なサービスを提供することに集中することができ、顧客満足度も結果的に上がる効果が期待できるでしょう。
おわりに
以上、LINEミニアプリが注目されている理由について、スーパーアプリ・ミニアプリを利用した実績やネイティブアプリとの違い、ミニアプリのメリットといった面から解説しました。
LINEミニアプリの活用事例を具体的にご覧になりたい方は、下記記事をご参照ください。
また、LINEミニアプリ開発にご興味のある方は、下記ページもあわせてご覧ください。
2022年7月21日