需要予測

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この記事では、販売量や出荷量の予測、在庫管理などに欠かせない需要予測のメリットや必要性を解説するほか、需要予測を導入した事例を紹介します。AIによる自動発注などを検討される方もぜひ参考にしてください。

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マクロセンドは、企業の状況・要望に合わせて、需要予測に欠かせないデータ分析基盤の構築を総合的に支援いたします。

 

データ分析基盤の構築にご興味のある方は、下記記事やお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

 

 

需要予測とは

需要予測とは、蓄積したデータや予測モデルをもとに、自社の提供するプロダクトやサービスの将来的な需要を予測するものです。

 

小売業や製造業における仕入れの効率化に利用されるほか、ホテルや病院の稼働率を予測することによって、繁忙期の価格を調整(ダイナミックプライシング)したり、新規開業・増改築する際の参考にしたりするケースなどがあります。

需要予測の必要性・メリット

なぜ需要予測が重要視されるのか、需要予測の必要性とメリットを解説します。需要予測が求められる理由は、大きく次の通りです。

 

・欠品による機会損失

・過剰在庫による値引きや廃棄コスト

・需要予測業務の属人化

・多品種少量生産により生産計画が立てづらい

・企業収益の最大化

 

不正確な需要予測は、企業に損失を招きます。以下に、不正確な需要予測が損失を招く理由を続けます。

欠品による機会損失を予防

予測が甘く、生産や在庫の確保が足りなかった場合、欠品や欠員により需要に応えられずサービスを提供することができなくなってしまいます。

 

不正確な需要予測は、得られるはずだった利益の取りこぼしにつながるのです。

過剰在庫による値引きや廃棄コストの抑制

在庫不足とは対照的に、過剰在庫による損失も発生します。過剰に仕入れた商品は、品質の劣化、陳腐化などにより基本的に時間が経過するほど売れにくくなるため、最終的に値引きや廃棄処分といったコストがかかります。

 

廃棄しない間も、保管スペースの圧迫という形で管理費用がかかり続けます。

多品種少量生産によるコストの抑制

昨今、多様になった顧客ニーズに応えて生産品目を臨機応変に変更するために、多品種少量生産となる傾向があります。

 

多品種少量生産では、生産する製品を変更するたびに生産ラインを一時的にストップする必要があることから、十分な生産数を確保できず利益につながりにくい一面があります。一方でラインを止めずに生産数を確保すると、今度は在庫管理コストがかかるため、やはり十分な利益を維持するのは困難になってしまいます。

 

精度の高い需要予測に基づき、製品ごとにどれだけの在庫を持つべきか判断することで、コストの発生を最小限に抑えることが可能になります。

需要予測業務の属人化を防ぐ

現在、すでに需要予測業務が確立されており、十分な精度で成果が出ていたとしても、将来的にコストが発生しうる要因もあります。それは、需要予測業務が属人化してしまっているケースです。

 

少数の担当者が長年培った経験をもとに需要予測業務を行っている場合、現在は需要予測を原因とする損失が少ないとしても、担当者が退職してしまえばここまでに挙げたリスクは噴出します。そのため、属人化しない需要予測が求められるのです。

企業収益の最大化

精度の低い不正確な需要予測が損失を招く一方で、正確な需要予測は企業収益の最大化に繋がります。

 

具体的にどの程度収益が増加するのかについて、マッキンゼー&Coがまとめたレポートがあります。レポートによると、予測精度が10~20%向上すると、在庫コストが5%低減し、収益が2~3%増加するといいます。

 

参考:

McKinsey & Co, Notes from the AI Frontier, April 2018|McKinsey & Company

 

需要予測の事例

需要予測の事例を紹介します。

ベイシア:需要予測システム刷新によりセール期間中の発注量をコントロール

ショッピングセンターやホームセンターを展開するベイシアグループでは、セール期間中の過剰発注を防ぐために需要予測システムを刷新しました。

 

ベイシアグループでは以前から需要予測システムを導入していましたが、従来の需要予測システムではセール期間中の商品をシステムの指示通りに発注すると在庫が過剰になるという問題があり、担当者が手動で設定しなおすなどの作業が発生していました。

 

そうした問題に対して、需要予測システムを刷新することによりセール期間中の発注量をコントロールできるようにしました。今回の需要予測モデル確立に際しては、商品の販売数量だけでなく価格にも注目したとのことです。

 

参考:

ベイシア、需要予測システム刷新 セール時の売れ方反映|日本経済新聞

 

ベイシア:レジの混雑を予測してリソースを最適化

同じくベイシアの事例です。同社では、レジ混雑予測システムの導入も進めています。来店者数とレジ待ち人数を計測し、設定されたお客様行動モデルに基づきレジ待ち時間をシミュレートすることで、応援が必要となる場合に事前に通知するシステムです。

 

従来は、前年度のレジ通過客数と客数予測から必要レジ台数を算出していましたが、今回の取り組みでは有人レジ通過客数実績、レジ通過客数予測に加え、システムが把握しているレジ待ち人数実績データ、入店客数データも活用することで、顧客を待たせず、かつレジを稼働させ過ぎない計画を自動作成しています。

 

その結果、稼働前に2分半~7分強だったレジ待ち時間が、稼働後は2分弱~5分強まで短縮。混雑時にスポットでレジを開放できるようになったことで、混雑が緩和しました。適切なレジ開放によりレジ担当者による他業務の実施が捗ったことから、時間外労働時間の削減などにも貢献しています。

 

参考:

事例報告 ベイシアにおける生産性向上対応 AI導入でレジ混雑緩和|労働政策フォーラム(2019)

スシロー:ビッグデータ分析し寿司流す廃棄量 75%減

回転寿司最大手のスシローはIT活用に力を入れており、2002年から全店で「回転すし総合管理システム」を導入しています。同システムは、供給指示、寿司の鮮度管理を支援するほか、データ分析により1分後と15分後に必要な握りネタと数を予測します。

 

需要予測には、皿に取り付けたICチップで収集したリアルタイムな売れ筋データを活用。さらに、累計40億件に達する販売ビッグデータを分析し、顧客の食欲を読む需要予測「喫食パワー」も取り入れています。

 

参考:

スシロー、ビッグデータ分析し寿司流す 廃棄量 75%減

みんなのタクシー:タクシー需要を予測し地図に表示

タクシー大手の大和自動車交通は、タクシー需要が見込める地区をAIで予測して地図上に表示するサービスを導入しました。同サービスは、大和自動車交通が株主として参画するみんなのタクシー株式会社が提供するものです。

 

みんなのタクシーの需要予測サービスは、東京都内で走行する10,000台を超えるタクシー車両の走行データを基に開発されており、タクシー内に設置された乗務員用タブレットを通じてドライバーの効率的な走行ルートの意思決定を支援します。

 

今回導入された需要予測サービスの主な機能は次の通りです。

 

・需要予測:AIによる需要予測

・乗車点予測:特に需要の高いスポットや、タクシー乗り場、長時間乗車が多い乗車点の需要予測

・ロング率:長時間乗車を需要予測

・空車動態表示:空車タクシーをリアルタイムで地図上に表示

・おすすめルート表示:目的地まで需要が高いスポットを経由するナビゲーション

・特需発生通知:タクシー需要が急激に高まる大型イベント終了などをリアルタイムで検出し通知

 

参考:

みんなのタクシーが提供する 需要予測サービスの導入について|大和自動車交通株式会社

大和自動車交通、AIでタクシー需要予測 営業効率化|日本経済新聞

 

ワークマン:自動発注導入で発注業務を2分に短縮

作業服とアウトドアウェアの小売店を展開する株式会社ワークマンでは、日立と協創して約10万品目の発注業務を自動化するシステムを導入しました。

 

今回導入された自動発注システムは、在庫回転率が低い品目に対応する「自動補充型」と、在庫回転率が高い品目に対応する「AI需要予測型」のアルゴリズムを併せ持っており、商品の売れ行きに応じて最適なアルゴリズムをタイムリーかつ自動で選択・切り替えることが可能です。

 

ワークマンは、本システムを活用することで従来は各店舗でおよそ30分かかっていた発注業務を、およそ2分に短縮することができたとのことです。

 

参考:

ワークマン/「AI需要予測型自動発注」全店導入へ、発注業務を2分に短縮|流通ニュース

ニュースリリース:2021年4月19日|日立

 

ライフ:生鮮食品に対応する自動発注システムの導入

スーパーマーケットを展開するライフコーポレーションは、日本ユニシスと共同開発したAI需要予測による自動発注システム「AI-Order Foresight」を導入しました。

 

同社は、システムの導入により発注作業時間の5割超の削減を目標としています。需要予測には、販売実績・気象情報・販売計画などの各種データを活用しており、2018年から実証を進めたうえで、2021年に導入を開始しました。

 

同社では、一部商品(冷蔵を要さない食品など)を対象とする自動発注システムを既に導入していたものの、販売期間が短い牛乳などの日配品は対象とすることができず、店舗・商品ごとに発注作業が発生してといいます。

 

今回導入したシステムでは、牛乳のような日配品もAIによる需要予測の対象となり、発注の自動化を推し進めることで商品の欠品・廃棄ロスを削減するとともに、従業員のさらなる作業負担軽減を目指します。

 

参考:

スーパー「ライフ」、AIによる需要予測を導入 生鮮食品などに対応|ITmedia

年間40万時間の発注作業を一気に半減 ライフ全店で導入のAI自動発注システムの実力とは|DIAMOND Chain Store

NEWS RELEASE|ライフコーポレーション

キリン堂|自動発注システムを刷新し、日配品に対応

ドラッグストアおよび調剤薬局を展開する株式会社キリン堂は、発注業務の大幅な効率化を目指し、株式会社シナプスが開発した需要予測型自動発注システム「sonops-DgS」を全店舗に導入しました。

 

ドラッグストア業界では各社が出店攻勢を強めている状況において、一般食品や日配食品などのカテゴリー強化を進める中、欠品や過剰在庫の発生、現場での手作業が減らないことなどが課題となっています。

 

「sinops-DgS」は、従来のキリン堂のオペレーションと比べて欠品数を27%改善できること、最も時間がかかっていた日配品の発注時間を50%削減できることが期待されているとのことです。

 

参考:

キリン堂、全店舗の自動発注システムを刷新|株式会社キリン堂ホールディングス

イトーヨーカドー:8,000品目を対象とする商品発注補助システム

株式会社イトーヨーカ堂は、AIを活用した商品発注システムを全国132店のイトーヨーカドーに導入し運用を開始しました。本取り組みでは、カップ麺や菓子、冷凍食品、アイス、牛乳などの計約8,000品目が対象となります。

 

今回導入されたシステムは、価格・商品陳列数・天候情報・曜日特性・客数といった基本情報をAIが分析し、最適な発注数を提案するものです。

 

全国店舗に先だって本システムを導入したテスト店舗では、店舗担当者が発注作業にかける時間を平均約3割短縮でき、また営業時間中に商品の在庫がなくなる事例を減らす効果も明確に確認できたといいます。

 

参考:

接客や売場づくりをより強化 – 「AI(人工知能)発注」の仕組みを全店に導入|イトーヨーカ堂

ローソン:誤差3割改善でロス削減

ローソンの店舗では、調理パンなどの商品の発注に「セミオート(半自動)発注システム」を2015年から導入しています。

 

発注システムは、会員数9,000万人を超える(※)Pontaカード会員の購買動向をベースに、店舗ごとの売上動向・客層情報・天候といった情報を分析して、「自店に最適な品揃え」と「商品別の発注数」を自動的に推奨します。

 

システムからの提案を参考にしつつ、最終的に発注者が地域行事などを考慮して品揃えと発注数を検討することで、さらに発注精度を向上させています。2015年の導入時点で、飲料や加工食品の「計画発注システム」とあわせて、1日の作業時間を1人あたり2時間削減できたとのことです。

 

※2019年6月末時点

 

参考:

<参考資料>AIによる店舗配送ダイヤグラム最適化の実証実験開始|ローソン公式サイト

地球環境保全の取り組み:廃棄物削減|ローソン公式サイト

ローソン統合報告書|ローソン公式サイト

需要予測の体制構築を支援します

これまでに弊社が蓄積した知見・技術をもとに、需要予測に欠かせないデータ分析基盤の構築に関して、お客様に寄り添ったご提案をさせていただきます。

 

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2021年12月10日